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嫉妬と羨望と(D・O)

2018.11.08 15:00|お誕生日記念三部作

声を好きになった。ほぼ同じ音域を持つ、その低く奥行きのある深い声を。
ジョンデが天に抜けるようなどこまでも上に昇って行くような直線的な高音の持ち主だとすれば、ベッキョンは広い森の中を縦横無尽に進んだ先に広がる草原のような、立体的な声音の持ち主だと俺は思っている。

EXOというグループでデビューすることが決まり、ボーカル組と呼ばれるようになった。しかしその組み分けの中で俺は劣等感を感じずにはいられなかった。入所僅か数ヶ月でデビュー組と呼ばれるようになったジョンデとベッキョンの歌唱の才能は誰もが認めるものだったからだ。

まだ少し先になるけどEXO12人の完全体の時は、高音のジョンデと低音のベッキョンを繋ぐのがギョンスよ。

しかも極めつけはボイストレーニングの先生に言われたこの言葉で、それは2人がメインボーカルだという意味だった。
その時、猛烈な嫉妬心が湧き上がった。それは2人にはではなくベッキョンにだった。何故ならば、俺たちの音域はほぼ被っているにもかかわらず、低音パートのメインはベッキョンだと言われたからだ。

しかしそんな猛烈な嫉妬心もいつか鳴りを潜めていく。それはベッキョンの絶対的な才能を前にしたら、そうならざるを得なかった。そしてそうなってしまえば次に起こる感情は羨望だった。それは声に限らずその人格にも、だった。始めこそただ五月蠅い奴だとしか思わなかったが、それだけじゃなくさりげない気配りが出来ることや誰に対しても臆することなく向かって行けるところは、ただ凄いと思ったりする。だからベッキョンの人懐っこい笑顔は、向けられて嫌な思いをする人はいない。

そうしてそれが羨望という感情なのだと自分の心が落ち着き始めた頃のこと、ベッキョンとの何気ない会話の中で自分が恋に落ちる瞬間を目の当たりにする。

「ギョンスの歌声聞いてると安心するんだよ。俺の勝手な思いだけど、『ベッキョンは自由に歌っていいよ』って言われてるみたいで。」

プライベートでのノーメイク、眠そうな垂れ目と甘えたように突き出した薄い唇。その唇から歌声とはまた違った、例えるならば低いくせにコロコロと鈴が鳴るような声でそう言われ、正直胸を射抜かれた。そして知った。嫉妬と羨望は恋と紙一重なのだと。

自分にはないものを持っている。それだけで好きになるには十分だが、だったら声質の正反対のジョンデをとも思わないでもないが、正直ジョンデには嫉妬や羨望といった感情は生まれなかった。何故ならば自分とは違い過ぎるからだ。その声質も音域も何もかも。
それにそもそもジョンデの方からしても俺をそう言った意味でライバルとは思っていない。あまりにも俺たちは違い過ぎたから。



だが今、俺は猛烈にジョンデに嫉妬している。その声にではない。いや、声にもかもしれない。そもそも2人の声を繋ぐ役割は自分だったはずなのに。バスルームへ続く洗面所の扉の向こうから聞こえてくるのは、吐き出されるシャワーの音に混じる2人の吐息。
甘美な高さを持つジョンデの声と嫉妬と羨望とそして恋い焦がれたベッキョンの声が、耳触りも悪く不協和音なユニゾンを奏でている。

恋人のジョンデがベッキョンと浮気をしていることは、すぐに気づいた。しかもそれがいつからかも俺は知っている。
2人でレコーディングのスケジュールがあった日。機材のトラブルでレコーディングが中止となり、早々に2人で宿舎に戻って来ていたと聞いたあとのベッキョンの態度で、すぐにわかった。ベッキョンは良くも悪くも隠し事が下手だ。

それになんといってもベッキョンはジョンデが好きだから。

そんな単純な理由だけではないが、それが大きな理由であることも確かだ。
嫉妬と羨望。それが高じていき恋心へ発展する。わかりすぎるくらいベッキョンの気持ちがわかった。だからこそ2人の関係にもすぐに気づいてしまったのかもしれない。

自分もそうだったから。

自分にはないものすべてを持つビョン・ベッキョンという存在は、俺にとっては嫉妬と羨望の対象だった。歌の才能も人としての素養も、憎いくらい羨ましかった。
そんなベッキョンが自分の恋心を隠し、好きな人の幸せを願った。やはり嫉妬と羨望しかなかった。それが自分の心を歪ませた。ジョンデの気持ちを受け入れ、ベッキョンを泣きそうな笑顔にさせた。
結果それが今では自分で自分の首を絞めているということもわかっている。しかしもう引き返せない。

洗面所への扉に手をかける。
これを開けばなにもかもが壊れ、大きな痛みを伴うだろう。それがわかるから一瞬躊躇し、扉から手を離した。

「…ベッキョナ…もうイっていい?」
「…いいよ…」

しかし扉の向こうからくぐもった声で僅かに聞こえてきた2人の声に理性の箍が外れ、俺はその扉を開いた。

嫉妬と羨望は恋と紙一重であり、また狂気とも隣合せかもしれない。




~終わり~


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トライアングルの行方

みむ子様


すべて読ませていただきました…!!
ありがとうございました、ほんとうに!!!

ディ、ディオ〜〜!!でした←

私はベッキョンに懸想しているディオが三度の飯より好きなので←、まことありがたかったです…。
以前もお伝えしましたけれども、みむ子様のディオのベッキョン片思いシーンが私大好きで、あれはもうマイ・ベスト・二次BLシーンのひとつなわけでして、今もよく思い出しては一人で萌えています。
みむ子様の独特なあの胸キュン感…素晴らしいですよね。

今回は胸キュンとはまた違った感情を掻き立てられるお話でしたけれども、いい感じで恋愛の渦にはまり込ませていただき、ものすごく楽しかったです。
もうなんか三人でとかどう?みたいな←(じょ、冗談です…)

そして私はやはり行き場のない思いを胸に抱えている若者描写みたいなものはみむ子様の真骨頂であるなと改めて思いました。
もやもやして、遂に吐き出して、でも簡単にはうまくいかなくて、という。
みむ子様の人生に対する真剣な眼差しがこちらに乗り移ったような気に都度なります。

こんなに素敵なお話3つを、こうしたタイミングであげてくださるなんて申し訳ない思いでいっぱいです。私のことは気にせず、多くの方が読んでくださるといいなとほんとうに思います。

みむ子様とカムバックの話などもよろしければさせていただきたいななんて思ってもおります。
素敵セフンに魅了されている私ですので、そこらへんもキャッキャ言いながらお話しできたら幸せです。

それではまた伺わせていただきます!!
心底嬉しいプレゼントでした。いつもそうですが、今日もまた、みむ子様は私を救ってくださいました(本気です)。
ありがとうございました。


檸檬


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