小さな世界=44(ベッキョン)・完


誰かを好きだと思う感情は暗示だ、と昔テレビだったか教師の話だったか、はたまた占いやまじない好きの女子の話かで聞いたことがある。
「誰々のことが好き」と自分で言えば自己暗示にかかり、「誰々のことが好きなんじゃない」という他人の言葉では一種の催眠術のようなものにかかるのだと。
その前に、その相手のことを好んでいるか、ということが大前提ではあるのだろうが。
自転車を漕ぐ間、ベッキョンはそんなことを思い出していた。
しかしそのことをより深く考えるだけの時間はベッキョンにはなかった。


寝静まった住宅街の一画にある停留場に設えられたベンチに、チャニョルは長い脚を投げ出し座り、その目はあまり星もない夜空を見上げていた。
そんなチャニョルの横顔を見つけ、ベッキョンは少し離れたところで静かにブレーキをかけた。キュッという小さな音が上がったが、チャニョルは気づかないようだった。
ああ、やっぱり好きだな、と思った。
言葉で説明できる感情ではない。暗示だってなんだっていい。とにかく何が何でも好きと思うのだから仕方がない。
ベッキョンは自転車を降りると、それを押しながらチャニョルに近づいた。


静かに近づくベッキョンに気づいたチャニョルは、その相好を崩しながらベンチから立ち上がった。
「ベッキョナ…」
やはりその笑顔と自分の名を呼ぶ声にベッキョンの心は跳ねる。
「俺んち知らないくせに、とりあえず来るとか無謀過ぎるし…」
しかしそんな心を隠し、ベッキョンの口調はやや強い。
それでもチャニョルは「へへ」と軽く笑い、そんなベッキョンを気にする風もない。
「ごめんね、こんな時間に呼び出して。でも今日中にどうしてもベッキョナに会いたかったんだよね。」
しかもそんなことまで言い出す始末で、その言葉の意味をベッキョンはどうとったらいいのかが分からない。
だからベッキョンはもう言葉を返すことが出来なくなった。さらに顔も俯けた。
「やっぱりデートしようよ、ベッキョナ…」
そんなベッキョンの頭の上に、チャニョルの低音の言葉が降って来た。ベッキョンはその言葉の内容に、ばっと顔を上げた。
「だからそういうことは女の子に…」
しかし真っ直ぐに見てくるチャニョルの顔を見返すことが出来ず、ベッキョンは憎まれ口を言うようにして顔を逸らした。
「俺ベッキョナが男の子だって分かってるよ。それで今、デートの申し込みしてるの。相手が男だろうが女だろうが、俺はこうしたいし、こうしか出来ない。それでベッキョナとデートがしたいって思うの。…それに…」
そう言ってチャニョルは、そっとベッキョンの手を取った。そして少しだけベッキョンに顔を近づけると、小さな声で囁いた。
「キスもしたいよ」
誰がパク・チャニョルは残念な男だと言ったのだろうか?いや、こういうところは実は女の子にとったら残念なところなのか?
なんだかよく分からないが、ベッキョンは自分の顔が赤くなるのが分かった。
しかしそんな顔を上向かせ、挑むように聞いた。
「…いつにする、デート?」
やはり自分が生きる小さな世界を、それほど嫌いではない、とベッキョンは思う。
小さな世界ではあるが、たくさんの楽しいことや嬉しいことが、こうして起こるから。
そしてそれはこれからも起こり続けていくだろうから。



~ベッキョン編・終わり~



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