おいつきたくて=1(ベッキョン)


そういえばちゃんとしたデートというのは初めてかもしれない、と一度一緒に映画を観に行った時と同じ約束の場所に向かうベッキョンは思った。
タオと付き合っていた時も、どこかで待ち合わせをして映画を見て食事をして、なんてことは殆どしなかった。
お互い高校生同士で同性同士ということもあり、学校帰りになんとなく待ち合わせてDVDを借りてコンビニで軽食を買ってタオの家に行く、そして借りてきたDVDを垂れ流しながらセックスをする。それはタオが大学生になっても変わらずで、そんなことばかりだったような気がする。
あえてデートらしいことといえば、買い物が好きなタオに付き合うくらいのものだった。それだって正直なことを言えば、ベッキョンにとっては楽しいこととは言えないものだった。なにせタオの買い物には、ほぼ丸一日を費やすのだから。
それにもっと言えば、ベッキョンがタオの趣味やその時間に合わせることはあったが、タオがベッキョンに何かを合わせてくれたことは、あまりなかった。DVDの趣味も出掛ける時の行先も、時折タオの買い物中に買いたい物を見つけ物色していても、そこにベッキョンの趣味を反映することは、なかなか難しいものだった。
さらに究極なことを言えばセックスだってタオの独り善がりな部分は多々あった。それこそ一日中買い物につき合わされ、くたくたになった体を、今日は嫌だと言っても、好きにされたこともあった。
ふとそんなことを思い出したが、ベッキョンはこれからのことに思いを向ける為に小さく頭を振り、そこからタオを、過去の恋を追い出した。


約束の時間10分前にも拘らず、チャニョルはそこに立っていた。
相変わらず通り過ぎる女の子たちの視線を独り占めしているチャニョルを、つい足を止めて見入ってしまう。
そして数か月前も同じようにここでチャニョルを見つけドキドキしたなと思い出す。でもあの時と自分たちの関係は、少しだけ違う。
「あれが俺の彼氏なんだ」とベッキョンはどこか他人事のように思った。
そんなことを思いながら立ち止まっていることなど知らないチャニョルは、ベッキョンをその視界に捉えると破顔し、またしても大きな声で「ベッキョナ~」と名を呼び腕を振った。
結果、通り過ぎていく女の子の視線までベッキョンは集めてしまうことになり、とてつもない恥ずかしさと小さな嬉しさで顔を赤らめることとなった。
「ヒョン、相変わらず声大きいよ。」
小走りで近づいたチャニョルに睨みながらそう言うと、これまたチャニョルはえへへと笑い、ごめんねと言った。
まるであの日をやり直しているようだった。チケットは用意され、いろいろと気遣ってくれるチャニョル。
ただ少しだけ違ったのは、映画を観ている途中でチャニョルがベッキョンの手を握ってきたこと。
その瞬間は「うわ!」となったけれど、「ああ、やっぱり付き合ってるんだ」という実感が湧いた。嬉しさからなんだかにやけそうで、ベッキョンは下唇を噛んで、そんな自分を戒めた。
しかしその反面、もやもやとした小さな小さな思いも湧いた。ああ今までもこうして、過去の彼女たちの手を握って来たんだなという思いだ。それが嫉妬というものからくることにも気づいていた。
だから正直、途中からスクリーンには集中できなくなった。
けれどそんな両極端の気持ちを持ちながら、あの日と同じ裏通りのイタリアンのレストランにも行った。あの時ここで小さな諍いを起こしたことを思い出せば、少しばかり入りづらさもあったが、あれからは時間が経っていたことや、あの日とは違う店員ばかりだったことで、それは杞憂となった。そうして勿論、ピザも頼んだ。
そしてまたあの日と違ったのは、おいしくピザを全部食べ、チャニョルが頼んだカルボナーラにも手を出した。
ピザはおいしかった。カルボナーラもおいしかった。だがやはり、ただおいしかった、とだけは思えなかった。
チャニョルの行動の全ては、チャニョル自身の優しさからくるものだということは分かる。分かってはいるのだが、その優しさを享受してきたであろう過去の影と、どうしても自分もその影たちと同列に扱われることへの違和感が、ベッキョンの心をもやもやさせ、そしてちりちりとさせた。自分は女ではない。男なのだと、しなくてもいい意識をしてしまう。
そしてなにより、そんなことを感じる自分にベッキョンは初めは驚き、次に憤りもした。
こんな気持ちは知らない。こんな気持ちを抱く自分は知らない。こんなのは自分じゃない。ベッキョンの心の中ではそのような色々な感情が鬩ぎ合い混ざり合っていった。
それがいつ爆発してもおかしくないほどに。




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