こんな運命=8(D・O=ギョンス)

2017.06.10 09:00|こんな運命(ギョンス)

コンビニからすぐのところに、そのホテルはあった。
やはり目的地はホテルだったのかと、ギョンスは少しばかり訝しく思った。
そこは街中にある小さな古いビジネスホテルで、ジュンミョンはフロントマンとは親しげだった。
地元でも有名な資産家の息子であるジュンミョンには、とても不似合いなホテルだと思ったが、そこでギョンスはハッとした。
帰国したジュンミョンとは何回か会っている。しかしいつも別れ際になると寄るところがあると言って、そのまま雑踏に紛れ込んでいってしまっていた。
再会した日のこともそうだ。お互いの実家は近いのに、少し離れた駅での待ち合わせだった。
そして待ち合わせた約束の場所に行くと女装したジュンミョンがいて、さっきのタクシー運転手やコンビニ店員と同じようにギョンスは目を剥き、ただ驚きが先に立った。
「もう俺、優等生のキム・ジュンミョンは辞めたんだ。俺にとっては優等生のキム・ジュンミョンの方が鎧だった。だからといってこれが本当の姿って訳でもないけど、でもこうしている時の方が楽なんだ。」
再会の開口一番、驚きで言葉が出ない親友に向かって、ジュンミョンは笑顔でそんなことを言った。
そして「もう全部捨てて来たんだ」と言った。その時はこれまでの「優等生のキム・ジュンミョンを」という意味だと思ったが、その全部には家や家族も含まれていたんだと、この時になって初めて分かった。言い訳かもしれないが、驚きの方が強くてそんなことにまで思いが回っていなかった。帰国した旨のメールを貰った時も、ジュンミョンがこんな状態でいることも知らなかったので、何の疑いもなく実家にいるものだと思っていた。だが思えば、あんな恰好の息子を送り出し迎え入れてくれる親など、そうそういない。
そんなジュンミョンは帰国してからここを常宿にしていたのだろう。
「行こうぜ。」
今どきカードキーが主流だが、ジュンミョンが手にしていたのはルームナンバーのキーホルダーが付いた普通の鍵だった。それがこのホテルが古いことの象徴であり、宿代が安いことを想像させた。それを持ちギョンスの元へ戻ってきたジュンミョンは、そこに置き去りにされていたコンビニ袋を再び手にしながら言った。
改めて見ると、ややくたびれ始めているジュンミョンの女装姿。それにギョンスはなんとも言えない気持ちが込み上げてくる。
それと同時に思うのは、中学の頃、ただの優等生というだけでなく、そのそこはかとなく洗練された身のこなしから育ちの良さが窺えた親友が、こうした寂れたホテルに身を寄せていることにも、なんとも言葉に出来ない思いを抱いた。
そしてエレベーターに向かい先を歩くジュンミョンの背を見ながらギョンスは口を開いた。
「全部捨てたって家も家族もってことだったんだな。」
僅かに申し訳ない気持ちが含まれた声だった。その声が届いたジュンミョンには同情という受け取り方の方が強かったかもしれない。
「今さらかよ。」
だからだろうか、ちょうどエレベーターの開くボタンを押したジュンミョンはギョンスに振り返り、少しだけ切ない笑顔で答えた。
そんなジュンミョンとギョンスの前で扉は開き、2人はそこへ乗り込んだ。そして扉の方へ2人して向き直ると、ジュンミョンは扉上部にある階数表示が変わっていく様に視線を預け言った。
「お前、俺のことに関心ないだろう。」
やはり少し切ない笑みを浮かべていたが、ジュンミョンはこれまでで一番真剣な口調だった。だからギョンスは答えられなかった。そう指摘されて違うとすぐには言えない自分に気づいたからだ。
「だからざまーみろなんだよ。」
到着階に着いたことを知らせる小さなチーンという音と共に、ジュンミョンの口から再び放たれたその言葉に、初めてギョンスはもしかしたらという考えが浮かんだ。そしてまさかという思いも。





ランキングに参加しています。よかったらぽちっとお願いします。
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ
にほんブログ村




拍手、ランキングへのぽち、ありがとうございます。
関連記事

Comment

非公開コメント

| 2017.11 |
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -
プロフィール

みむ子

Author:みむ子
K-POPグループEXOのBL妄想小説置いてます。

最新記事

最新コメント

カテゴリ

デフォルトカウンター

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR

ページトップへ