おいつきたくて=4(ベッキョン)


ひとしきり2人でピアノに向かっていた。クラッシックとジャズのピアノ共演は楽しかった。時折、顔を見合わせては笑った。
「もう疲れた~」
しかしいくらタッチの軽いキーボードといっても、こう何曲弾いたかも分からないくらいになれば指は疲れる。
さすがにベッキョンは指を止めた。
そして隣を向いた。
いつからかずっとベッキョンの横顔を見ていたのだろう、そこには優しいチャニョルの眼差しがあった。
けれど優しさの中に、僅かに別の色が見えた。その色が何を表しているのかを知っている、とベッキョンは思った。
思った通り、色が含んだ瞳がベッキョンに近づいてきた。ベッキョンは自分の瞳を瞼に隠した。
すぐに唇に柔らかいものを感じた。チャニョルが座っていたキャスター付きの椅子がギィと小さく音を立て、ベッキョンが座る椅子に近づいたのが分かった。そしてさっきまでキーボードを操っていたチャニョルの大きな手が、ベッキョンの肩に乗った。
しかし触れるだけでチャニョルの唇は離れていった。だいぶ物足りなさはあったが、ベッキョンはゆっくりと瞼を上げた。
そのベッキョンの瞳を覗き込むようにして、チャニョルは優しく言った。
「俺もさ、気が短いところがあったりするから怒ったりするけどさ、やっぱり恋人には笑っててほしいなって思うよ。」
肩にあった手を頬と顎の辺りに移動させ、「だからさっきはあのまま帰したくなかったの、初めてのデートだったしさ」とチャニョルは言葉を繋いだ。
やっぱりこんな付き合い方は知らない、とベッキョンは思った。嬉しくもあったが、どこかもやもやとするものがある。
「…ヒョン…俺…男なんだよ。だからそういう優しさ?…いらないよ…」
自分の心を表現する上手い言葉が見つからなくて、とても素っ気ない言葉になってしまった。だから本心であって本心ではなかった。
しかしチャニョルにしてみたら、そんなベッキョンの本心など分かるはずもない。
その言葉通りに取れば、きっと腹を立てるような言葉だ。
「ベッキョナは男の子だよ。ちゃんと分かってる。むしろ俺より男っぽいんじゃね?って思うし。それにベッキョナに優しくするのは男とか女とか関係なく、好きな子には誰だって優しくしたいって思うからだよ。」
けれどチャニョルは怒りもせず、俯いてしまったベッキョンの手を取り、そう言った。
「あんまり偉そうなこと言えないけど、ベッキョナは男の子しか好きになれない自分をどこかで否定してるんじゃないの?こんな自分に優しくしてもらう権利はないっていうような感じでさ。誰よりも男らしいから余計にね。だから男だとか女だとか、そういうことに拘るんじゃないの。」
そして続いたチャニョルの言葉に、僅かに驚いた。自分のセクシャリティーに気づいてから、それを隠そうとはあまり思わなかった。だから自分を否定しているとは思っていなかったが、確かに自分自身で異端者だからというレッテルは貼っていた。それがそういうことに繋がっていたのかもしれないと初めて思った。
それに今思えばタオに優しくされたいと思ったことはなかった。ただこんな自分を受け入れてくれたことが嬉しかった。だから付き合っていたし、デートなんてしなくても良かった。それこそセックスだけしていれば、自分の存在意義が見出されていたようにも思えた。
「ベッキョナは男としても人間としても、凄く魅力的だよ。だから俺、好きになっちゃたんだし。」
こつんとおでことおでこをチャニョルはくっつけてきて、そう囁くように言った。
「ほら、ルハニヒョンのことでベッキョナ怒ったじゃん。人の過去をべらべらしゃべるもんじゃないって。あれ結構効いたわ。もしかしたらあれだったのかもベッキョナに堕ちたの。今になって思えば。」
そして至近距離で目を見つめられながらそう続けられたが、ベッキョンは何も言えなかった。またしてもいろいろな感情が込み上げてきていたから。しかしそれは、さっきとは全然違った感情の集まりだった。爆発しそうだったあの感情はすっかり消えていた。
「ベッキョナを女の子みたいに思ってるから優しくするんじゃないよ。ベッキョナは恋人だから優しくするんだよ。それ忘れないで。」
けれどやはり込み上げる感情で声は出せなかった。ただこくりと首を縦にするだけだった。今度は口を開けば涙が出てしまいそうだったから。




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