おいつきたくて=5(ベッキョン)・完


冬の夜は訪れが早い。
チャニョルの作業室を出て来ると、そこにはすっかりと夜がやって来ていた。
「送っていくね、て言うと、俺男だし、とか言うんでしょう?だから、もう少し一緒にいたいから、ってことで一緒に帰ろう。」
からかい半分の口調でそう言ったチャニョルの腕に、ベッキョンはぽかぽかと小さく拳を当てた。
「ヒョン、むかつく。」
そして口を尖らせそう言うと、先を歩き出した。でも本当に怒ってる訳じゃない。チャニョルもそれを分かっているから、後ろから「ベッキョナ~ベクちゃん~おベク~」とからかい続けてくる。
そんなチャニョルの声を背に聞きながら、ベッキョンは少しだけ視線を上にして少しだけ星の見える冬の夜の空を見た。
今日は一日、いろいろな感情に心が振り回された。自分で自分の心をこれほどまでに持て余したのは、きっと初めてのことだ。
つい今しがたまで、そうして振り回されていたから、まだよく分からないが、多分自分が思っている以上に自分はチャニョルを好きなのではないかと思う。そしてその気持ちに、自分自身ついていけていないのではと。
しかもチャニョルに優しくされ甘やかされて、そういったことに慣れていない自分に戸惑い、それを女の子扱いされているのではないかと腹を立てた。
好きな人には優しくしたい、と言ってくれたチャニョルの気持ちも分かる。けれど、今の自分もそう思えるかと聞かれれば、自信を持って肯定はできない。
やはりまだまだ、いろいろなことについていけない。人を好きになるということは、相手を知ることも勿論だが、自分を知らなければ始められないことなのかもしれないとベッキョンは思った。
「おベクちゃんてば~」
少しばかり自分の考えに耽っていたが、相変わらずチャニョルはベッキョンを呼び続けていたらしい。しかもおかしな呼び方で。
それにはベッキョンも堪えきれなくなって笑い声を上げた。
「おベクちゃんってなんだよ、もう~」
そう言って、足を止め振り返った。そこには寒そうにダウンジャケットに顔半分を埋もれさせ、ポケットに手を突っ込んだチャニョルがいた。
「ベッキョナ、歩くの早いし。」
そう言いながら、ポケットから手を出し、それを差し出してくる。その意味が分からず「うん?」とした顔をすると、すかさず手を握られた。
「恋人には優しくしたいっていうのともうひとつ、触れていたいっていうのもあるの。」
そしてそう言うと、そのまま2人分の手をまたポケットへと突っ込んだ。嬉しいけれど、やっぱり慣れない、と思う。でもここはもう何も言わずに、ただポケットの中の手を強く握った。
思えばこの日は初デートだったのだ。これまで全く違った道を歩んできた2人なのだから齟齬があることが当然なのだ。
それに焦っても心と気持ちがおいつくことはない。いつか自然と2人には2人の形ができていればいいのではとも。
そしてきっとそうなって初めて、自分の心と気持ちもおいつくのではないかとベッキョンは思った。
その時まで、2人の時間を重ねていけたら、それでいい。
「ヒョン、今度はジャジャ麺、食べたい。」
そう思いながらもう一度、少し遠くにある冬の夜の空を見上げ、ベッキョンは隣を歩くチャニョルに言った。
「おいしいところ探しておくね。」
隣からそう返事が来て、ベッキョンは誰からも見えないところで繋がる手に、再び力を込めた。




~終わり~




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