わかってない=5(チャニョル)

2017.07.07 09:00|わかってない(チャニョル)

バスを降りても、やはり外はまだまだ暑かったです。しかし目的地までは、もうあと少し。俺はベッキョンの半歩前を歩きます。
そして歩くこと数分。とある小さなマンションの前に着きました。
ベッキョンは不思議そうな顔で、「ここ?」と聞きます。俺は「うん、ここ」と言ってエントランスを潜ります。
あまり新しくもなくエレベーターもないようなところです。しかし俺はちょっと心踊る感じで足取りも軽く階段を上ります。
「エレベーターなくてきついけど、4階まで頑張って。」
後ろを付いてくるベッキョンにそう声を掛け、先を行きます。本当は2段飛ばしくらいで上がりたいくらいです。
しかしベッキョンは2階と3階の間の踊り場で足を止めました。俺もそうせざるを得ませんでした。
「…ヒョン…もしかしてヒョンが借りたの?ここ?」
そして少し戸惑ったような声で、ベッキョンはそう聞いてきました。俺は後ろを振り返りました。
「…そうだよ?」
ベッキョンの声の調子と、完全に足を止め顔が見えないことに、つい今しがたまでの心踊るような気持ちは、一気に消え失せました。
「…ベッキョナ?」
数段の差がありましたが、俺はまたそこを戻りました。そして俯くベッキョンの前に立って名を呼びました。けれどベッキョンは顔を上げませんでした。
「どうしたの、ベッキョナ?」
ベッキョンの片手は手すりに置かれていました。そのもう一方のぶらりと下していたベッキョンの手を取り聞きました。どこかに行ってしまいそうな感じだったからです。だからぎゅっとその手を強く握りました。
「ベッキョナ?」
もう一度名前を呼びました。自分の声に不安が乗っているのが分かります。そしてそれはベッキョンにも分かったのだと思います。ベッキョンがゆっくりと顔を上げました。そこに現れた瞳が少し濡れているようにも見えました。
「…俺があっちの作業室にいると落ち着かない、って言ったから?」
俺は驚きました。確かにベッキョンはそんなことを言っていました。どうしたって2人きりでいたいと思うと、あの場所しかなかったのです。一緒に借りてる仲間に悪いと思っても、お互い実家暮らし(といっても俺はそこにもあまり帰らないけれど)で同性同士の俺たちには、あの場所しかなかったのです。それをベッキョンが凄く気にしていたことも分かっていたはずなのに、俺はその言葉をすっかりと忘れていたのです。そんな自分に驚いたのです。
「違うよ!そうじゃない!」
けれど今、そんなことを言っても、きっとベッキョンは信じないでしょう。それでも本当に違うんだ、と伝えたいのに。
だが俺を見上げるベッキョンの濡れた瞳が、どんどん水分を増してきます。
「…じゃあ、なんで?ヒョン、金ない、っていつも言うじゃん。それなのに…」
眉尻を下げ声を震わせ上ずらせるベッキョンに、俺の心はぎゅうぎゅうと締めつけられました。
ああ、どう言えば、どう伝えればいいのだろうかと、俺はベッキョンの手を強く握りしめて思いました。
しかし、言葉でなんて伝わらない。今は何を言っても、きっとベッキョンは納得などしない。それも分かっていました。
だから俺は強く握ったベッキョンの手を引きました。
「ベッキョナ、来て。」
そしてそう言って、その場に踏ん張ろうとするベッキョンの手をもう一度強く引っ張りました。
やっぱり2段飛ばしで階段を駆け上がりたいと思いました。




ランキングに参加しています。よかったらぽちっとお願いします。
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ
にほんブログ村



拍手、ランキングへのぽち、いつもありがとうございます。
関連記事

Comment

非公開コメント

| 2017.09 |
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
プロフィール

みむ子

Author:みむ子
K-POPグループEXOのBL妄想小説置いてます。

最新記事

最新コメント

カテゴリ

デフォルトカウンター

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR

ページトップへ