わかってない=6(チャニョル)

2017.07.08 09:00|わかってない(チャニョル)

まだまだ日は明るく、そして暑くもありました。しかしそんなことは、今はどうでもいいことです。
自分の手が握っているベッキョンの手が、若干の拒否を示していることも分かってはいました。
けれど絶対にその手を離してはいけないということも分かっていました。
だから繋いだ手とは反対側のポケットに入った鍵も、体を捩るようにして取り出しました。
とにかく部屋の中に、漸く手に入れた宝箱の中に宝を隠してしまいたい、そんな思いでした。
鍵を鍵穴に差し込んでそれを回し、勢いに任せてそこを開き、とにかく、という思いで手を引っ張りました。
「ちょ、ヒョ、ヒョン!靴!靴!」
そんなものどうでもいい、と思いました。だって床の汚れなんて、後からいくらでも綺麗にできるから。
「いいから!ベッキョナ!こっち!」
どかどかと音が鳴るほどの足音を立て、まだどことなく他人の家のように感じるそこを突き進みます。とはいえ、それほど広いそこではありませんが。
すぐに辿り着く防音室の扉を開き、そこへベッキョンを文字通り押しこめました。
「ベッキョナ、ここ座って。逃げないでよ。」
何故そんな言葉を言ったのかは分からなかったけれど、つい口をついて出ていました。
さすがにここまで来るとベッキョンは観念したようでした。
そしてまだまだ機材も揃ってないそこにある一台のパソコンを開き立ち上げます。この僅かな時間さえ、とても長く感じました。指先が早く操作をさせろと訴えるように、そこをトントンと苛立たしげに叩きます。
きっとそれほど長い時間はかかってはいないはずなのですが、漸く、という思いでキーボードに指を乗せました。
音楽ファイルから目当ての曲を探し、それを再生させる。そこまでできて、俺はやっと息をした気がしました。
パソコンから流れるのはピアノ曲。そんなに長くないフレーズをリピート再生させています。
「…この、曲?」
3回ほどリピートされた時、ベッキョンが口を開きました。しかしそう発しただけで、また口を噤んでしまいます。曲に耳を傾けているようでした。
そして6回目に入った時、また口を開きました。
「これ…さっきの映画の中で流れた曲だよね?」
確認するように俺を見上げるベッキョン。その目が疑問を訴えています。
「そうだよ。やっぱりベッキョナは分かるよね。」
映画の終盤、男女の主人公が水平線から上る朝日を見つめている、という場面で流れるピアノ曲。その場面の時、この曲が流れた時だけ、ベッキョンの背が背凭れから離れ、少しだけ前のめりになったのです。その時ベッキョンが何を思ってそうしたのか、耳を傾けたくなったのかは分かりませんが、俺は嬉しくなったのです。
「…でも…この曲が…なんなの?」
しかし今のベッキョンには、この部屋を借りたことと何の関係があるんだと、そういう気持ちなのでしょう。だから僅かに俺を責めるような口調でした。でもそれでいい、と思いました。そうやって素直な感情を向けてくれることは、俺の願うところだから。
そして俺は椅子に座るベッキョンの前に跪き、その手を取りました。そしてその目を見て告げました。
「この曲ね、タイトル『光』っていうの。俺がベッキョンを思って作った曲だよ。」
ベッキョンは驚きで目を見開きました。俺はそんなベッキョンを見つめていました。俺たちをピアノの音が包んでいるようでした。




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