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EXOTICA:白の洞窟 「identity crisis・2」

2017.09.27 09:00|EXO企画
EXOTICA

このお話はこちらから始まっております→睡魔夢子様のブログ 「EXOTICA」:入口


企画参加の書き手様方のお話(本日公開分)
EXOTICA:黄の洞窟「闇を駆ける罪 2」 フェリシティ檸檬様
EXOTICA:赤の洞窟「They Never Know 2」 haruyuki2様
タイトルをクリックするとお話に飛べますので、是非ご覧ください。


高空飛行はスピードがあまり出ないらしい。
先ほどまでとは違い、空飛ぶクラッシクカーは、ゆったりしたスピードで超高層マンション群の間を移動していた。

「…もう少し上昇しますね。」

しかし運転するキョンがそう言うと、ゆっくりと旋回するように車はさらに上昇していった。
その上昇が目的地への為だと気づいたのは、超高層マンションの屋上にあるガレージのようなところに車が吸い込まれるように入り、タイヤがやっと地面に着いた時だった。やはり車は地面に着いていないと不安だななどと思っていたら、車の背後にシャッターのようなものがゆっくりと下り、そのまま車ごと降下し始めたのを感じる。
今度はなんだと思い、シャッターのようなものが下りた背後を振り返り少しだけ体を強張らせたセフンだったが、あのガレージのようなもの自体が車専用のエレベーターだということに気づくのは早かった。
十秒ほどにも満たない下降でそれは止まり、今度は目の前でシャッターのようなものが上がった。そして車が自動で前に進むのだが、それはたぶんエレベーター自体がそういった仕組みなのだろう。僅かな機械音のようなものが足元でしたと思ったら、背後に回ったエレベータのシャッターが音もなく閉まった。

「着きましたよ」

そのキョンの言葉と同時に車の扉が自動で開き、セフンは少し驚きながらも、車の外に足をついた。
するとそこはもうマンションの一室だった。駐車場が部屋の一部というのが正しいのか、部屋の一部に駐車場がある、というのが正しいのか、そのへんはよく分からなかったし、この部屋に来る時は屋上から車でないと来れないのか、などいろいろと疑問はあったが、今の自分はここに住む『ヤンゴ』なのだ。そんな疑問を口には出来ない。

「…少し疲れたから、休みたいんだけど…」

つい今しがたまで空を飛んでいたからだろうか、地に足が付いていると思ったら、どっと疲れが出た。それにこの短時間にあまりにいろいろなことがありすぎて、もう頭の中がパンク状態だった。だから今は頭の中を整理したい。というよりも何よりも、一人になりたかった。だから、車から降り部屋の中を進んでいくキョンの背中にそう言うと、キョンは小さく笑い言った。

「ヤンゴ様、お部屋でお休みになってください。」

そしてそう言ったキョンは僅かに小首を傾げ、思わせぶりな視線を投げる。その先、セフンの右手側にドアらしきものがある。これもまたらしきもの、としかいいようがなかった。見る限りドアノブがないからだ。

―――どうやって開けるんだろう…

そう思ってドアらしきものの前まで進むと、いきなり自動でドアが開き、セフンは少し驚き体をびくつかせてしまった。そんなセフンを勿論キョンが見ていた。その視線に気づき振り向くと、キョンは何も言わず、ただミンソクと同じ顔に笑みを浮かべた。

「夕食出来たら、呼びに来ますね。」

突然異世界に来て、しかも全くの他人(でもないような気もするが…)に間違われ、あれよあれよという間にここまで来てしまったが、よく考えればキョンも自分には違和感を感じているはず。
いくら顔が同じであっても、話し方やちょっとした仕草などですぐに別人だとわかるはずだ。セフンがミンソクとキョンを別人だとわかったように。
しかもセフンはこの世界の『ヤンゴ』という人間を知らないし、そもそも『ヤンゴ』になり変わろうとも思っていなかった。だから何も飾らず演技もせず、ここまで来たのだが、キョンは何も言わなかった。

―――顔だけじゃなく話し方も仕草も考え方とかも、よく似ているということなのかな…

ポジティブに考えるとそうなのかと思いながらヤンゴの部屋に入って行ったセフンだったが、すぐにそんな思いはどこか遠くに飛んで行った。
何故かといえばその部屋は、至ってセフンの感覚に近い造りの部屋ではあったが、全てがピンク色に彩られていたからだ。

「俺、絶対にこんな部屋にしないし!」

あまりにも度肝を抜かれたその部屋で立ち尽くすセフンは、1人そう叫んだ。そして体も頭も休ませたかったのだが、目がチカチカしそうなほどのピンク色に、セフンはさらに疲れがどっと肩に乗ったような気がして、がっくりと項垂れた。
やはりここは自分のいた世界ではない。そしてここにいたであろう自分と瓜二つの人物は、自分と似ているのは顔だけのはずだ。そうでなければ自分の部屋をこんなことにはしないはず。
そんなことを思っていたが、あまりの疲労具合にセフンは飛び込まずにはいられなかったベッドの上で、眠りの世界へ意識を落とした。

すべてがピンク色だった。
セフンに迫るミンソクの頬も、少し窄められた唇も、元々は真っ白な首筋も、大きく開いた襟元から覗く鎖骨も、いろいろなトーンのピンク色で、どこをとっても、とてもおいしそうだなと思った。
しかもこんなに積極的にセフンに迫るミンソクは、とてもレアだ。

『…食べる?』

小首を傾げた上目遣い、そして語尾にはハートマークが付くような言い方。
これはまさに据え膳食わぬはなんとやら、だなとセフンは目の前のミンソクに抱きついた。

「ヒョン!」
「ぐえ!」

しかし目の前に広がる絶景と耳に届いた声に齟齬があった。そもそも自分は目を閉じているではないか。ということは、この絶景は瞼の裏で展開されている、つまりは夢かと理解した時、セフンはぱっと瞼を持ち上げ、現実世界を見た。
けれどやはりそこは、すべてがピンク色だった。
ピンク色の天井と壁、ピンク色のベッドカバー、そしてピンク色のミンソク。そのピンク色のミンソクと目が合う。

「ヒョ…」

ヒョンと呼ぼうとしたが最後の一音を飲み込んだ。自分が抱きしめている人物を凝視しながら、一瞬のうちに脳裏を駆け巡るのは異世界での体験。あれは夢ではなかった。これはミンソクではない。そして自分も今はオ・セフンではない。この世界に生きる自分と瓜二つの『ヤンゴ』ではないと、ばれてはいけない。
セフンの脳内ではすさまじい速さでそれらのことが計算され、キョンを抱きしめているこの状況をどうすればいいかと逡巡する。そしてまるでキョンの瞳の中にその答えを探すように、セフンはそれを見つめ続けていた。

「…御夕飯できましたが…その…先に…シますか?」

その見つめ合いから先に退場したのはキョンだった。
真っ直ぐに見つめていた黒曜石のような瞳を横に向け隠し、ピンクに染まった頬がセフンの目の前に晒されている。
どこからどう見てもミンソクにしか見えないなと思いながら、今キョンが小さく囁いた言葉を脳内で反芻する。

―――…先に…シますか?…先に?…シますか?…シま?…すか?………えええええええ!

その言葉の意味を理解した時、セフンは心の中で大絶叫していた。そしてそれがついぞ漏れないように、セフンは口元に掌を置いた。
名前こそ違うが容姿が瓜二つの自分たちが、この異世界でどのような関係なのかは気になっていた。しかし本物のヤンゴと入れ替わっていることに気がついていない様子のキョンに、自分たちはどのような関係だとは、まさか聞けるわけがない。
だが今、セフンの求めていた答えが、キョン自らの口から飛び出てきたようなものだ。まさに棚から牡丹餅のように。
しかもミンソクと瓜二つの顔で恥じらいながらの言葉でもある。それがセフンの下半身に響かないわけがない。
この世界でもミンソクと同じ顔をしたキョンと自分と同じ顔をした『ヤンゴ』という2人は恋人同士なのだろう。そして今、この世界での『ヤンゴ』という人物は自分なのだ。となれば、これもひとつの据え膳食わぬは何とやらではないのか。

「…どう、しますか?」

そんな勝手な解釈を脳内で繰り返していたセフンを、キョンが見つめ、そう聞いてきた。しかし上目で覗いてくる瞳を直視できず、セフンはぎゅっと目を瞑った。
確かに据え膳食わぬは男の恥だが、目の前にいるのはミンソクと同じ顔をしているがミンソクではないのだ。いくら自分もこの世界では『ヤンゴ』という名前になっているからと言っても、自分は自分なのだ。この世界から見たら、どこに位置しているかはわからないが、2017年の地球に生きるオ・セフンなのだ。ここでこの据え膳を食ってしまったら、元の世界に戻った時、まともにミンソクの顔を見れなくなる気がする。同じ顔であっても別人なのだから、これは立派な浮気になってしまう。

―――ああ、もったいないけど、ごめんなさい!

セフンの脳内で、あらゆることが瞬殺で計算されていく。いくらフォーメンションの難しいダンス曲も、これほどまでに一瞬一瞬で考えて踊ってはいない。
そんなことも頭の片隅で思いながら、理性を総動員してセフンは腕の中にいるキョンの体から、そっと手を離した。そしてゆっくりと瞼を上げると、にこりと笑った。

「お腹空いた。ご飯食べる。」

良い雰囲気だったと思ったのは自分だけだったのかとでもいうように驚き、そしてすぐに傷ついたような顔をしたキョンに、セフンは少しばかりの罪悪感を覚える。
それでもここで簡単にキョンに手を出すわけにはいかない。そうしてしまったら、元の世界に戻った時にミンソクに対する罪悪感が計り知れないと思うからだ。

「…わかりました。じゃあ、食べましょう。」

そういって背を向けたキョンを見て、セフンは小さく安堵の息を吐き出した。
だが、元の世界に戻れるかどうかも分からない状況でのこの環境は、ある意味蛇の生殺しだなと思うセフンの肩に、どっと何か重いものが乗ったような気がした。

「耐えられるのか、俺?」

正直セフンの腹は、空腹など感じていなかった。



~続く~


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