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EXOTICA:白の洞窟 「identity crisis・4」

2017.09.29 09:00|EXO企画
EXOTICA

このお話はこちらから始まっております→睡魔夢子様のブログ 「EXOTICA」:入口


企画参加の書き手様方のお話(本日公開分)
EXOTICA:黄の洞窟「闇を駆ける罪 4」 フェリシティ檸檬様
EXOTICA:赤の洞窟「They Never Know 4」 haruyuki2様
タイトルをクリックするとお話に飛べますので、是非ご覧ください。


とても不思議な光景だった。
空飛ぶ車が停まる駐車スペースからすぐ傍にあったピンク色の部屋から続く、廊下というよりは通路という方がしっくりくるような無機質な通りを奥に来ると、これまた自動で開く扉があった。その扉の中はとても広いリビングダイニングになっていて、ほぼ一面ガラス窓という造りになっていた。
一つ一つの部屋自体はセフンが生きる時代の感覚に近いのだが、車の駐車スペースから続く部屋と部屋を繋ぐ通路は、とても無機質な作りで、よくアニメや未来設定の映画などに出てくるそれのようだった。
そして今いるダイニングは、前日の夜もここで夕食をとったのだが、その時はその一面のガラス窓にあまり意識は向いていなかったようで、思い出してみても、その向こうにあるであろう高層マンション群の窓に灯る、ところどころの明かりだけが記憶に残っていた。印象としては夜が深かった、という感じだ。だから余計、そちらには意識が向かなかったのかもしれない。
だが一夜明け、すっきりと晴れ渡るガラス窓の向こうを見ると、そこには大きなバスやトラックがとても綺麗な水色の空を往来していた。
その光景を呆けるように見ながら、先ほどのキョンの言葉と今自分が目にしている場景を鑑みると、今日は働く車の日なのだな、とセフンは自分の中で理解をするしかなかった。

―――あのバスには乗れないのかな?

そして納得してしまえば、単純な興味が湧いた。そのせいかダイニングテーブルに座る自分の目が、ずっとそのバスを追っていたらしい。キッチンから朝食を持ってくるキョンがそのことに気づき、声をあげた。

「久しぶりにバスに乗りますか?」

乗ってみたい、という興味はある。しかしなんとなく外へ行くのが怖いとも思う。けれど一日中、ここでキョンと2人でいるのもどうしていいかわからない。だからといって、『ヤンゴ』ではない、とばれない自信も持てない。それはどこにいても、どこに行っても、同じだろうが。

「どこに、行く?」

わりと自分は楽天家なのかもしれない、と前々から思っていたが、そんな言葉が出て、やはりそうなのだ、と今改めて思った。確かに『ヤンゴ』ではないとばれたらどうなるかわからない。しかし乗ってみたいという興味はあるし、いろいろな所へ行ってみたい、という探究心が勝ってしまったようだ。

「今日行ける所は…」

盆に乗った朝食をテーブルに置くと、立ったままのキョンは空中に手を翳した。一瞬、手を振り上げられたのかと思ってセフンの体がびくっとしたが、そんなことよりもキョンの手の動きに倣って、空中から文字が突如現れたことの方がセフンは驚きだった。
まさに未来を設定した映画の中のように、ふっとどこからか現れた空間よりも一段色を濃くした透明のディスプレイ。
そこに地図、または路線図のようなものが描かれているが、その地形などはセフンが知るものと。まったく符合する場所がなかった。やはりここはセフンの知りえる場所ではないのだなと思えた。
しかし慣れとは恐ろしいものである。そんな突拍子もないものが目の前に出て来ても、この世界なら何でもありだからね、と一瞬の驚きのすぐ後に納得できてしまう自分がいた。

「う~ん、今日は面白いところに行けるバスはないですね…」

キョンの基準の面白いところ、というのがどういったところかわからなかったし、この世界のこの場所が、どういったところかもわからない。だがふとセフンの脳内に、この世界に来てしまう前の風景が過る。だからつい口をついて出た。

「…海…とかは?」

そもそもこの世界に海はあるのか?という思いもあったが、聞かずにはいられなかったのかもしれない。だから空中に浮かぶディスプレイを見上げていたキョンに、どこか自信なさげに窺うように聞いていた。
そんなセフンをキョンは、一瞬目だけを下に下げ見た。しかしすぐに空中に視線を上げた。

「…海、ですか…」

何かを考えるように答えたキョンは、浮かぶ透明のディスプレイの前で指を動かす。すると画面が変わり、何かの一覧のようなものが映し出された。それを横に流していき目的の場所までくるとピタと指で止めた。

「う~ん、バスだといろいろなところに停まってから行くことになるので、かなり時間がかかりますね。明日、うちの車で行くのはどうですか?」

海に行けるのなら明日でもいいか、と思うが、そうなるとこちらの世界へ来て3日目ということになる。帰れる手立てはまったく以てわからないが、さすがに焦りの気持ちが沸く。

「時間かかってもいいよ。行こうよ。今日中に着くんでしょう?」

少しでも早く、元の世界へ戻りたい。そんな思いから体を前のめりにさせる勢いで言葉を放つと、キョンが少し驚いたような顔をした。セフンにしたら、もう素の自分でいることは当たり前だったが、さすがにこれはまずかったか、と思った。だが『ヤンゴ』という人間がわからなかったし、ここまでキョンは、こんな自分を『ヤンゴ』として受け入れてきた。だからもうどうにもできなかった。

「わかりました」

けれどキョンはすぐに笑顔になり、そう答えた。やはり笑顔がいいな、と思った。ミンソクとは別人、ということはいやでもわかっているが、やはり同じ顔である以上、笑っていてほしい、とセフンは思った。
そして浮かぶディスプレイに何かを操作し、そこから文字が消えるとそれに手を翳し、どこかへ飛ばした。

「朝食をとったら早速出かけましょうか」

笑顔のキョンがそう言って椅子に座った。2人で向かい合い朝食を食べた。なんとなく希望が持てたことに食も進んだ。特に何を話すでもなかったが、ミンソクと2人でいるような錯覚にセフンも笑顔を浮かべていた。

朝食を終え、セフンの希望通り海へ行く為に準備をしていた。セフンは綺麗に洗濯された昨日と同じ服、つまりは元の世界から着てきた服を、そしてキョンもまた昨日と同じように両班の格好をしていた。しかし今日は先ほどの窓ガラスの向こうに広がっていた空と同じような綺麗な水色のそれだ。
しかし今、何故かその姿のキョンがベッドに背をつけているセフンの上に乗っている。

―――え~と…なにこれ?

つるりとした広めの額を全開にし綺麗に髷を結ってるキョンの頭に、まだ冠は載っていない。もうあとは、それを被ったら出かけられるというところに来て、いきなりキョンにベッドに押し倒されたと思ったら、その上にキョンの体が乗ってきたのだ。

「本当に海に行きますか?行けば、今日中に帰ってはこられませんよ。」

今のこの状況もよくわからなければ、セフンを見つめ、そう言うキョンの真意もわからない。セフンはただ驚きでキョンを見つめていると、その視線に恥ずかしくなったのか、僅かに目を伏せたキョンが言った。

「…その…シないの、かな、と思って…」

―――だ・か・ら~!お願い!やめて!

別人だということがばれるのは怖い。しかしそれ以上に怖いのは、こういった状況になることだった。だから無理やりにでも出掛けたかったのだが、まさかキョンが実力行使に出るとは思っていなかった。
ああ、どうしよう、どうすればいい、とセフンは自問自答する。けれどそこにはもう、黙っていればいい、ミンソクに知られなければいい、という据え膳食わぬは男の恥という選択はなかった。

「ええっと…海…行こうよ…」

そう言って、自分の体の上にあるキョンの体をやんわりと押しやる。だがそのセフンの手をキョンは払いのけると、そのままその手をベッドに押し付け、再びセフンに迫る。「えっ」と思う間もなく、手の自由を奪われたセフンの唇も、キョンのそれで奪われた。

―――マズイ!マズイ!マズイってば~!

顔だけでなく腕の力が強いところまでキョンはミンソクに似ていた。だからセフンの手首はキョンの小さな手で、びくともせずベッドに縫い付けられている。そして体もキョンの体全体が乗っているので、セフンはその下から逃れることができない。最後の抵抗で首を横に振ってみたが、それをキョンの唇が追ってくる。
ミンソクに似たキョンの綺麗なピンク色の唇に追われている、と思うと、もうこのまま流されてしまおうか、という考えがふとセフンの脳内を過る。
海へ行けたとしても、元の世界へ帰れる確約はない。
それどころかもしかしたら、このまま帰るなんてことはできないのかもしれない。
だったらこのまま『ヤンゴ』として、すべてを受け入れてしまおうか。
いつしか首を振るのをやめたセフンの口内をキョンの舌がなぞるように動くと、あまり深くは考えられなくなっていた。
だからセフンの脳内を過った考えが現れたように、セフンは強張らせていた体から力を抜いた。
そしてそれがキョンにも伝わったのだろう、押さえつけられていた手首に掛かっていたキョンの力も抜けた。
セフンは自分の手をキョンの背中へと持って行くと、そこに力を込めた。
それを了承と取られてもおかしくはない。

「…いい、ですか?」

だから一度唇を離したキョンがそう聞いてきて、思わずセフンはこくりと首を縦にしてしまった。
ミンソクとキョンが別人であることはわかっている。
そしてキョンが自分を『ヤンゴ』だと思っていることもわかっている。
さらにはミンソクに対する罪悪感が無いわけじゃない。
それはキョンに対しても『ヤンゴ』に対しても同じだが。
だがもう、ここまできたら。

―――据え膳食わぬは男の恥なのだ!

と思ったのだが、いざ始まってみると、それがまたなんだかおかしい。
互いの体の上下を入れ替えようとしたのだが、それをキョンのミンソクにも劣らない力で制された。
しかもいつまで経ってもキョンがセフンの上から退くことはなく、キョンの指先や舌はセフンの乳首を弄り、手はズボンの中へと伸びてくる。この辺りまでなら、キョンは積極的なんだな、くらいで終わったのだが、なんと屹立の兆しを見せ始めたセフンの男たるゆえんのもののその奥にまでも指先が伸びようとしたものだから、セフンは慌ててキョンの腕を掴んだ。

―――ちょっと待て!ヤンゴって受けなの?聞いてないよ~!据え膳食われるの俺の方なの?!無理無理無理無理~!

今までしてきたことはあったがされたことはないことに、セフンの背筋がぞわぞわと粟立つ。それにセフンは驚き、そして大人しくされるがままというわけにはいかなくなった。

「ちょっと待って!」

キョンに力で勝てるかどうかもわからなかったが、セフンは渾身の力を込めて自分の下半身に入り込んでいるキョンの腕を引き抜いた。
やはりこのままではダメだ。元の世界へ帰れるか云々も大事だが、このまま『ヤンゴ』としてここに存在していたら、後ろの穴の貞操の危機である。自分が受け側に回るということは考えたことなどなかったが、もしそのような状況が来たとしたら、間違いなくその時の相手はミンソクである。いや、ミンソクしか受け付けたくない。

―――俺はセフンだ!EXOのマンネのセフンだ!2017年の地球で生きるオ・セフンだ!キム・ミンソクを愛してやまないオ・セフンなのだ!

何を血迷っていたのだ。危うく自己を失念してしまうところだった、とセフンはその瞳に力を込めた。
そしてキョンの手を制したままベッドの上に起き上がった。そしてキョンの手は掴んだまま、もう片方の手で自分の身なりを最低限できる限りで整えると、正座をした。
このキョンが力任せに、とか、嫌がるのに無理やり、とか、そんなことは考えられなかったが、どうしてかセフンはその手を離せなかった。

「俺、ヤンゴじゃない」

掴んだ手に力を込め、セフンは真っ直ぐキョンを見て言った。その声は、自分で思ったよりも強く、そしてはっきりしたものだった。
その声には表情には、もう迷わない、揺れない、流されない、という気持ちがありありと現れていた。
だからその真っ直ぐなセフンの視線を避けるように、キョンの顔はどんどんと傾いでいった。



~続く~



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