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EXOTICA:白の洞窟 「identity crisis・5」

2017.09.30 09:00|EXO企画
EXOTICA

このお話はこちらから始まっております→睡魔夢子様のブログ 「EXOTICA」:入口



企画参加の書き手様方のお話(本日公開分)
EXOTICA:黄の洞窟「闇に掛ける罪 5」 フェリシティ檸檬様
EXOTICA:赤の洞窟「They Never Know 5」 haruyuki2様
EXOTICA:青の洞窟「cruel spiral arousal ≪3≫」 βカロテン様
タイトルをクリックするとお話に飛べますので、是非ご覧ください。


どれだけの時間が過ぎたかわからなかった。
とても多くの時間が流れたようにも感じるし、ほんの一瞬だったようにも感じる。
まったくもってその間隔は、よくはわからなかったが、その間ずっとセフンはキョンの手を掴んだままだった。
そしてキョンもまた、その手を振り払うことをしなかった。
ただ漸くキョンが口を開いた時、その言葉が出たと同時に、そっとセフンの手から自分のそれを引いた。

「…あなたがヤンゴ様じゃないことはわかって、いました…」

それにセフンは勿論驚いたのだが、思っていたほどの衝撃はなかった。
きっと心のどこかで、もしかしたらという思いはあったのだ。
ひとつひとつをきちんと振り返ってみれば違和感を感じずにはいられなかった。
もし自分とヤンゴという人間が、キョンとミンソクとは違い、顔や姿かたちだけでなく性格や言動までもが似ている、いや、ほぼ同一人物に近いとしても、急にまったくの別人と入れ替わっているということに気づかないものなのだろうか。恋人同士ならなおさら。
そういうことを踏まえてよくよく考えてみれば、キョンの言動にもおかしなところがあった。
いちいちやることなすこと説明をつけ、セフンが戸惑わないように誘導してくれていたような気がする。

「…やっぱり、わかってたんだ…」

顔を隠すように俯いているキョンに気持ちはよくわかる、とセフンは思った。
騙していたという思いで、とても申し訳ない気持ちがあるのだろう。セフンと同じように。

「キョン、顔上げてよ。嘘ついてたのはお互い様だから。ね?」

だからそう言って、再びキョンの手をそっと掴んだ。するとキョンもまた顔を上げた。ああ、やっぱり似ているな、とセフンは思った。
どこか窺うような上目の視線。何に対しても自信を持っていいのにと思うほど遠慮がちな態度。
今のキョンは、そんなミンソクによく似ていた。

「本当にごめんね、ヤンゴのふりしてて…でもなんで別人ってわかってて、俺をここまで連れて来てくれたの?本物のヤンゴは?」

漸くいろいろなことをキョンに聞ける、とセフンは思った。だから何も考えず矢継ぎ早にそう聞いてしまったのだが、目の前のキョンはまたしても顔を俯けてしまった。
そして暫くの後、とても小さな声でその問の答えを口にした。

「…ヤンゴ様がどこに行ったかは、わかりません。あなたが現れた日の朝、おいらが起きたら、もうここに姿はありませんでした。」

セフンがこの世界に来てしまったのとほぼ同じタイミングで姿を消したというヤンゴ。やはりこの異世界へのトリップの鍵を握るのはヤンゴなのだろうか。
キョンとの陥ってはいけなかった一瞬の甘い時間に思考が奪われていたが、今の自分にとっての最大優先事項はこのことだったではないかとセフンは自分を叱りつけたかった。

「ヤンゴ様はグローバルランドの日本庭園が好きでした。だからもしかしたら、あそこにいるかも、と思って行ったのです。そうしたら本当にあなたがいて、やっぱりここだったかと思いました。だっておいらの名前を呼んでくれたから。でもすぐに別人と分かりました。だって本物のヤンゴ様は、おいらに抱きついたりしない。ヤンゴ様とおいらは、ただの…同居人…ですから。」

そしてまたキョンも、自分の知っている限りのことを話そうとしてくれているのだろう。俯き鼻をすすりながら懸命に繋ぐ言葉の中に、セフンを『ヤンゴ』としたかった理由が垣間見える。

「別人とわかっていても、あなたをここに連れてきたのは、あなたをヤンゴ様にしたかったからです。あなたの反応から、おいらもあなたの知り合い、というか恋人ですか?その方にに似ているんだと思いました。だから、だったら…」

ミンソクと同じ顔で苦しまないでほしい、とセフンは思った。しかしだからといって、ここで偽物の『ヤンゴ』としてキョンと共に生きることもできない。キョンの望むような関係になってはいけないし、そうなったところできっと二人とも幸せにはなれない。

「俺は君の知っているヤンゴじゃないよ。それでもいいの?顔が同じってだけで、俺でいいの?キョンが好きなのはヤンゴでしょう?キョンが言ったように、俺の好きな人とキョンは瓜二つなんだ。でもやっぱり俺は、その人がいいって思った。キョンじゃダメなんだ。」

これは嘘偽りない本当の気持ちだし、自分自身に言っている節もある。そしてもっと核心的な本音はと言えば、ミンソクにならいざ知らず、いくら顔が同じだからといってキョンに抱かれるのは無理!というところにある。そしてそのことは、顔が同じだけの別人である、ということをセフンに強く感じさせ、やはりミンソクでなければと思わせた。

「それはわかってます。でも本物のヤンゴ様は、おいらの気持ちを受け入れてくれないから…だから…」

おいおいと泣くキョンをセフンはそっと優しく抱きしめた。やはりミンソクの顔で悲しまれるのは、どうしたって放っておけない。それにもしかしたらミンソクも今、自分がいなくなったことで、こうして泣いているかもしれない。セフンの思い上がりかもしれないが。でもそう思ったら、やはり帰りたい、帰らなければと思う。
それにはキョンとヤンゴの関係や、この世界のことをもっと知ることが手掛かりになるのではとも思う。

「でもね、キョン。俺は…本当の自分でいたいし元の世界に戻りたい。キョンは俺の大好きな人に似てるけど、俺はここでキョンとは暮らせない。その人のところに戻りたいんだ。それに、キョンは俺でもいいの?ヤンゴに似ているって言うだけの俺で、それでキョンは幸せ?」

だんだんとしゃくりあげるほど泣き濡れるキョンの背中を宥めるように撫でていたセフンは、そっとキョンを腕から離すと、その顔を覗きこみ聞いた。
心もとなさを映す涙に濡れた瞳と、半開くぷるんとした唇から繰り返し零される小さく浅い呼吸。顔は確かに似ているが、どこかあどけない感じもする。なんだか急にキョンが小さな子供のようにも思えた。そんなキョンが少し間をおいて漸く首を横に振った。
それにセフンはほっとすると同時に小さな笑顔を浮かべ、もう一度キョンを抱きしめた。

「そうだよね。じゃあ、俺が元の世界へ戻れるように、そしてヤンゴがここに帰って来ることを、願ってよ。だからヤンゴのこと教えて。きっとそれが手掛かりになると思うんだ。」

そしてそう言うと、また背中をそっと撫でた。そうしているとキョンの呼吸もだいぶ落ち着いてきて、セフンはほっと安心もする。
するとセフンの腕の中からキョンは抜け出ていき、セフンをじっと見つめると、思い切ったように言った。

「ヤンゴ様のことはお教えします。でもその前に…なんでおいらの名前、知ってたんですか?」

それはキョンにとっては当たり前の疑問だ。そしてきっとキョンも、今の今まで聞きたくても聞けなかったのだろうと思う。
その気持ちがよく分かるから、セフンはふっとちいさな笑顔を浮かべると、キョンの頭を撫でた。
確か映画の中のキョンは10代の半ばくらいの年齢だった。このキョンも、もしかしたらそのくらいなのかもしれない。
さっきは思わず雰囲気に流されそうになってしまってあんなことにもなったが、可愛い弟のようにも感じる。

「まずは俺のことから話そうか?」

だからそう言って、撫でていた手でポンポンと軽くそこを叩いた。
しかし上手く伝わるだろうかと、それが不安だった。




~続く~


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Comment

うわーん

まだ、中間地点なのですけれど胸がきゅーっと
苦しくなりました。
キョンの気持ちヤンゴに届くと良いなぁ…。

そうか~恋人同士じゃなかったのか~

Re: うわーん

roiniy(ooba)様、こんばんは~♪

中間地点にもコメントありがとうございました!
リアルタイムでお返事できず、大変申し訳なかったのですが><

やはりキョンにもヤンゴにも幸せになってほしいなと思いますね。
このお話、意外とみんなに悲しい思いをさせてましたから。
そしてキョンとヤンゴの物語も書けたら書きたいなと思う一つです。(書きたいものが増えるだけですけど…(笑))

また他のお話へのお返事もしますので、もう少しお待ちくださいね(^o^)丿
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